Special スペシャル
「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」
原作者・鴨志田 一×監督・増井壮一
連載インタビュー
《マイスチューデント編》
原作者・鴨志田 一×監督・増井壮一
連載インタビュー
《マイスチューデント編》
姫路紗良というキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
鴨志田一
(以下、鴨志田)
(以下、鴨志田)
大学生編を書くにあたってキャラクターを並べた時に、咲太に対して恋愛要素で関わる人物がいなかったので、やはり一人いた方が良いだろうと考えて作ったキャラクターです。また、物語上で塾講師をしているという設定も活用し、今度は”先輩”ではなく、”先生”と呼んでくれる生徒を作ろうと考えました。咲太には麻衣さんがいるので、どう考えても揺るぎません。そこで、かなり攻めの姿勢で来る、古賀朋絵とは違う少し可愛い系のタイプの教え子という着想からスタートしました。

増井壮一
(以下、増井)
(以下、増井)
姫路紗良を演出する上で思ったのは、「この子は空っぽなんだろうな」と。埋めても埋めても常に空っぽが生産されるような自信がない子で、その自信を求めて、サメのように生きているという印象です。それでいて彼女は小悪魔的なルックスという武器を持っていて、男子はみんなそれでやられちゃう。演出する上では、そのあたりを強みにしてくることを念頭に、目力の表現を意識しました。

咲太が教えている塾の生徒である山田健人と吉和樹里の描写をする上で意識されたことを教えてください。
鴨志田
咲太が大学生になり、そこから見た高校生という位置づけとして、ギャグ担当のキャラクター山田くんを、そしてせっかく湘南のエリアが舞台の話でもあるので、ビーチバレーをやっている子も出そうと、樹里を設定しました。彼らが幼いことによって、咲太も少し大人になったという対比が描けるかなと。山田くんはとにかく愛されキャラですね(笑)。それと、ただ出てきても面白くないので、紗良を絡めた変な三角関係みたいなのも作ってみました。
増井
山田くんの存在は意外と大きくて、大学生編のキャラクターの中で一番反応がよく、お話の中にいるとすごくホッとする存在で癒やされるキャラクターです(笑)。ある意味、高校生編のかえで的な楽しい存在を、山田くんが担ってくれています。アフレコでも少しふてくされたような物言いが楽しくて、上手く演じていただけたなと思います。

第10話、鎌倉に向かう車中から鎌倉でのデートにおいては、姫路紗良が麻衣と格の違いを見せつけられ、追い込まれていきますが、このシーケンスにおいて描写を重ねる上でどんなことを意識されましたか?
増井
紗良から見れば麻衣は年上で有名人の素敵な女性。少なからず劣等感を抱いてしまうと思いますが、そのために麻衣が「怖いお姉さん」に見えることが無いように気をつけました。麻衣はゆとりのある人、紗良は一生懸命で弱さも持っている子に感じてもらいたいと考えていました。

美東美織は以前から登場していますが、動きが活発になってきました。彼女はどんな人物でしょうか?
鴨志田
咲太と同級生のヒロインには、卯月やのどかがいますが、その中でも正統派ヒロインです。「これはモテるだろう」と登場させたのが美織という人物です。結果的にあまり正統派ではなくなってしまったのですが(笑)。麻衣さんの言葉にもありましたが、咲太に似ているようなことを少し意識しながら作っていったキャラクターではあります。
増井
知り合い以上友達未満、それだけの感じにしたかった人物です。印象で言うと、風船みたいな人かなと。可愛くて皆好きだし、近寄るんだけど、掴もうとすると飛んでいっちゃうみたいな感じ。相手は何もしないんだけど、風に流されてしまう。そんな人かなと思っています。

大学生編を作っていく際、大学生らしい描写をする上で気を付けたことを教えてください。
鴨志田
大学生になったので行動範囲は広くなるだろうなと想定はしていましたので、キャラクターを取り巻く社会的な要素は高校生の時よりも広くしています。気分的には、高校生編の時は咲太のすぐ近くについていたカメラを、もう少し高い位置に置いた感じで、もう少し広い世界が見えるようになっています。さらに、大学は高校に比べて圧倒的に自分の裁量が増えていて、どの授業を取るかも自分で決めるので、そのあたりのゆとりみたいなものは、作品から伝わるといいなと思っていました。
増井
何をするにも本人次第という雰囲気は出したいと思っていました。制服という縛りがなくなったぶん、見た目においても自由に見えると思います。咲太なんて「決まったものを着ていないぞ」という雰囲気がたちまち表れる人物ですので、そうした自由気ままな雰囲気を芝居の上で出したいと思っていました。
自由さで言うと、麻衣さんが自分で車を運転できるようになったことで行動範囲が広がりました。
増井
そうですね。世界が広がると色々な景色を見せられるし、色々なことができるので、絵は楽しくなるのですが、作業的には大変です。高校みたいに自宅と高校と海をただ往復しているだけの方がずっと楽ですね(笑)。車内の会話シーンではどこにカメラを置くべきか、『おでかけシスター』のときも苦戦しましたが、このシリーズでも見せ方の苦労をしています。
