――放送が始まったと思いきや、もう第3話まで放送を終えて一区切りしました。イベントやSNSなどの反応を見ていると、放送前の時点で期待値の高い作品ですよね。
桜島麻衣役・瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸)
鴨志田先生と溝口先生による前作もありますし、イベントでも知ってくださる方が多くて、とても注目度の高い作品だという認識はありました。
2年ほど前に多数決ドラマという形で麻衣さんを演じさせていただきましたが、それは一度きりだったんです。その後にアニメ化が決まり、再び麻衣さんを演じさせていただくことになりました。また、その多数決ドラマに出演していたキャストみんなが続投できたことは嬉しかったですね。
――最初にシナリオをご覧になった印象は?
瀬戸
最初はタイトルに引っ張られて「女の子がたくさん出てくる作品なのかな?」と思っていました。たしかに女の子は出てきますが、読んでみると丁寧にひとりひとりの心情が描かれていて、ハーレム作品とは異なる内容だなと。学生時代の人には見せない部分……例えば、恋人同士のふたりだけで行われていたようなやり取りが繊細に描写されていて甘酸っぱいと言いますか。ちょっと照れくさいような青春が詰まっていると思いました。
――瀬戸さんはバニーガール先輩こと桜島麻衣を演じられました。
瀬戸
綺麗な見た目と女優業の経歴もあったうえで、序盤から咲太と様々なやり取りを見せていたため、最初はSっ気の強い女性なのかなと思っていたんです。もちろんそういう面もありますが、彼女の内面を知っていくと思いやりがあったり、実は照れ屋さんだったり。年相応な一面もあるので、外見だけじゃなくて中身を知っていくと、より魅力的に感じられる女の子だと思いました。
――最初はどのような演技プランで第1話のアフレコに臨んだのでしょう?
瀬戸
第1話の台本を読んでみるとト書きにも補足が多くて、映像が浮かびやすいと感じました。ただ、会話劇がメインになるのでセリフ数も多く、どうやって演じようかを考えていて。もちろん、家で練習しているときは自分が読んで感じたものを大事にしていますが、自分で作り込み過ぎても良くないと思うんです。現場のテストで掛け合いする方々のセリフを聞いたり、喋るテンポを聞いて臨機応変に演じていこうと考えたので、現場に行くまではわりと作り込み過ぎなかったですね。
ちなみに作中で会話することが多い咲太を演じる石川界人君は、10代の頃から一緒に仕事をしているんです。だから、どんな風にアプローチしてくるのかを頭の中で想像しながら練習していました。
――咲太もいわゆる王道な主人公ではありませんよね。
瀬戸
決して周りにたくさんおだてられたり、良い思いばかりをしているわけではなくて。痛みを抱えたからこそ今の性格になったという、バックボーンが垣間見えて立体的な主人公だと思いました。
――第1話~第3話までが麻衣のお当番回となって描かれていましたが、掛け合いが多い中で彼女を演じる上でのポイントは?
瀬戸
大人と会うときの演技で意識しているのが、“自然”であることです。お仕事をしているシーンはあまり描かれていなかったと思いますが、彼女は子供の頃から芸能界にいるので大人とのやり取りは慣れていると考えていて。ただ、大人だからといってわざと丁寧に接しているとは思われないように、彼女にとっては昔から変わらない環境だと会話から感じられるようにしたいと思いました。
また、かえでや学校の生徒とのやり取りを演じていると、麻衣さんは人と話すこと自体には抵抗のない子だと気が付きました。変に気遣いをすることもありませんが人間観察に優れている子で、そこには思いやりがあるんですね。相手が傷つくような言葉を選ばないし、状況を判断しながら喋るようにしていて。
でも咲太と喋るときは、どこか心を開いていると言いますか。出会って間もないですが、お互いに弱いところを見せあっているからこそ、自身の素直な感情も出せると思うので。だから決して甘えという意味ではなく、強気に出ても咲太は自分のことを嫌いにならないという少しの自信と信頼関係を出せるように演じたつもりです。もし、視聴者の方にそう受け取っていただけていたら嬉しいですね。
――咲太には最初の頃から手加減していなかったですよね。
瀬戸
ここまで深く関わることになるなんて、きっと麻衣さんは思ってもいなかったはずなんです。最初は同じ学校の後輩としか意識していなかったので強気の部分があると思いますが、関係性が深くなっていくごとに表向きじゃない緩んだ表情も咲太には見せられるようになるので。
あと第3話のクライマックスで咲太に告白されましたが、それ以降の彼女の対応には明確に違いが表れているんです。基本的には大人な性格の麻衣さんですが、恋愛方面には慣れていないので、きっと今後も可愛い一面が見えてくると思います。
――ちなみにスタッフの方から演技の方向性などのディレクションはありましたか?
瀬戸
「この役はこうしてください」というディレクションはなく、とても自由に演じさせていただきました。多数決ドラマからの継続ということもあるのかもしれませんが、意外と自分が持ってきた演技にOKを出してもらえることが多くて。
もちろん、セリフのひとつひとつに隠れた麻衣さんの真意について、自分の解釈とスタッフさんが考える麻衣さんは異なる場合もあるので、そのすり合わせのためにディレクションいただくことはありました。例えば、強く見せているだけなのに、私がただ強いお芝居をしてしまったため、照れているニュアンスを入れたり。そういう、ほんの少しの要素の違いを細かくすり合わせています。
――ここからは第1話~第3話まで振り返っていこうと思いますが、そもそも最初の出会いが衝撃的でしたよね。第1話の冒頭、図書館でバニーガール姿の先輩と遭遇するという。
瀬戸
基本的には自然な青春群像劇が描かれている作品なのに、この始まりだけ大きくかけ離れているんですよね(笑)。作中の世界には思春期症候群という病気が存在していて、その要素だけが異質。自分の記憶にもありそうな思い出の中に、ファンタジー要素が入ってきて……もう見ている方にとってはインパクトが大きかったと思います(笑)。
それにごく普通の図書館が描写されていた上でのバニーガールなので、より麻衣さんの姿が際立ちますよね。特にアニメから観始めた方は「あっ、そういうこと!?」と驚かれたのかなと(笑)。
――また、駅で盗撮を未然に防いだ咲太と一緒に帰る麻衣。帰り道の電車のつり革広告を見た麻衣が、どこかさみしげな表情を浮かべていました。
瀬戸
女優業をお休みして学校に来ているということは、女優を辞めたいのかなと思いきや、まだ未練がある様子が窺えましたね。その広告を麻衣がチラッと見ただけで、彼女の本心に気がつける咲太はすごいなと思います(笑)。麻衣さんも観察眼には優れてますが、咲太も一瞬を見逃さないで観察しているんだなと。
麻衣さんとしては、お母さんのこともあって勢いで辞めるとは言ったものの、やっぱり好きなことではあるはずなんですよね。ただ、取り巻く環境や人が合わなかっただけで。どうしたらいいか分からないから、とりあえず高校に行くという選択を選んだのかなと個人的に感じました。
――ちなみに瀬戸さんも高校生の頃からお仕事をされていたそうですね。
瀬戸
そうですね。麻衣さんほどの売れっ子女優のように、学校に行けないくらい忙しいことはありませんでしたが(笑)。ただ、学生時代は勉強や友達関係とか色々と楽しいことがある中、数年の差ではあるものの周りより先に社会に出て年上の人達と交流をするようになったことは、自分の中でとても楽しかったんです。
ふたつ世界があるという感覚でした。小中高と学年が変わるごとに新鮮なことはありますが、この仕事を始めて東京に週に数回行くようになってからは、もうひとつの世界があるように感じていて。むしろふたつあるからこそ楽しめました。
その点、麻衣さんは学校より仕事の方に傾き過ぎたからこそ、楽しみ切れずに葛藤が生まれたのかなと思います。
――学校と仕事じゃ環境が全然違いますよね。
瀬戸
いい意味でけじめをつけられたと思います。仕事の方は最初の頃は分からないことばかりで変に力が入ってしまうことは毎回でしたが、そういった経験も面白くて。大学にも行かせてもらったので色々な世界を見られましたし、色々な経験をするチャンスがあって良かったです。
麻衣さんのマネージャーは彼女のお母さんでしたが私のマネージャーは母ではないので、仕事を一本にするか、大学に行くかの選択肢はありました。当時は興味あることも多少はありましたが、大学には行かなくてもいいかなと思っていて。でもマネージャーが「行ける環境にあるなら、今しかできないことを経験した方が良い」と言ってスケジュールを調整してくれたおかげで大学生活という4年間を経験することができました。
――瀬戸さんにとって大きくプラスになったと。
瀬戸
これから長い人生、この仕事を続けられたらいいなと思うものの、その4年でしか経験できないことも感じた方がいいと思いますし、行って本当に良かったですね。
――その後の道すがら麻衣に起きた事象が語られ、改めて思春期症候群という病に言及されました。
瀬戸
この世界で存在が消えてしまうなんてことは……ないとは言い切れないんですけど(笑)。もちろん経験していないからこそ、見えなくなるってどういう感じなんだろうと興味は湧きましたね。
――話数が進むにつれて麻衣も不安が大きくなっていったと思います。
瀬戸
最初は見えないのを良いことにバニーガールの格好をしたり、どれくらい見えないのかを試していましたが、時間が経つにつれて徐々に見えない人が増えていって。それって本当に怖いですよね。いつか元に戻ると思っていたら全然治らないし、見えない人が増えていくし。麻衣さんもどうしようと不安になっていたと思うので、演じながらも恐怖を感じていました。
――徐々に増していく恐怖感はどのように演技に乗せたのでしょう。
瀬戸
麻衣さんの場合は、不安になればなるほどその気持ちを表に出さないんです。もちろんシナリオにそう書かれているので私もそのように演じているんですけど、彼女は不安になるほど強気に振る舞ってしまう。
きっとそれは性格が影響しているのかなと思いますし、だからこそ不安になっていることを周りに見せないようにしていました。隠している気持ちを咲太が見抜いてくれて、側に居てくれましたよね。
第3話の咲太が寝て麻衣さんを忘れてしまったシーンでは、その後もきっと不安だったと思うんです。でも咲太が第2話言ってくれた「絶対、忘れない」という言葉があったから、麻衣さんも「大丈夫かも」という希望を抱いていたのかなと思います。
――咲太の呼び方も「梓川君」から「咲太」に変化しました。
瀬戸
「君は梓川ってイメージじゃないし」とは言っていましたが……下の名前で呼びたい心理はどうなんでしょう。自分と近い関係性であることを表したかったのかな? 自分と近い関係値の人という認識を潜在的に意識しているというより、そういう存在がほしくて名前で呼んでみたのかなと個人的には思いました。
――第3話までで関係が大きく変化しましたが、第1話のふたりはどう感じましたか?
瀬戸
まだ出会ったばかりで、たまたま自分と似たような経験をしている人がいる。多分、自分のことを気にかけてくれているという認識でしょうか。同じ経験があることが大きなポイントで、だからこそお互いに興味を持って交流が続いているんじゃないかなと思います。
――第2話では麻衣の活動休止の理由が明らかになりました。これまで基本的に淡々と受け答えしていた麻衣が咲太に怒りを向けるシーンがあって。
瀬戸
きっと麻衣さんは図星だから怒ったんだと思います。分かっていることを自分で言うのはいいけど、人に言われると腹が立つじゃないですか。あえて空気を読まないと咲太は言っていましたが、そこで怒った麻衣さんはまた女優がやりたいことに気が付かされて。ただ、改めて自覚するきっかけになったんじゃないかなと思います。
――冷静そうに見えますが、麻衣の心情は意外と強く表れているような気がします。
瀬戸
第1話のラストで咲太の家の玄関のドアに座って待っているシーンは、咲太が見えているなら……という安心感があったんでしょうね。第1話の最後はとても不安そうでしたから。多分、照れ屋さんで強気な子だから口では助けてと言えず、見える可能性に賭けて咲太の家の前に行ったんだと思います。アニメだとキャラクターは声だけじゃなくて絵でも表現されるので、表情の変化で麻衣の心境の機微は描かれていると思います。
――小説のキャラクターに動く絵と声がついて心境や表情が描かれるのは、アニメならではの魅力ですよね。
瀬戸
自分も本は好きですが、読んでいると自分の頭の中で再生されるテンポ感があるので、原作のファンの方がアニメで見たときにどう受け取ってくれるかは気になるところですね。それぞれ好き嫌いはあると思いますが、面白いと受け取ってくれる方が多かったらいいなと思います。表情と言っていることが裏腹な子なので、立体的かつ具体的なアニメならではの麻衣さんを楽しんで見てもらえたら嬉しいです。
――そして母親にも認識されないことが明らかになりました。きっと麻衣が今まで認識されないことを試したのは他人だったと思いますが、今回は思春期症候群を患う以前に麻衣を知っていた相手、しかも肉親でした。
瀬戸
実際に会ってお母さんにも認識されていないことが分かったシーンは、本当に衝撃的でした。しかも、ただ見えないだけではなく存在自体が消えるじゃないですか。「誰?」というリアクションは、まさに空気が止まったようでとても怖かったです。
――まだ「麻衣はいないの?」みたいな反応だと良かったのかもしれませんが、そもそも存在が消えてしまう症状ですからね。また、直後にデートの提案をした咲太に対し「まだ私を帰したくないっ ていうなら、デートの続きをしてあげる」と気丈に振る舞うところも麻衣らしいなと。
瀬戸
お母さんとのことがあったにも関わらず、まだ強気に振る舞うんですよね。ホロッと泣いてしまいそうなところを強気に振る舞うくらいの気概というか。すぐに麻衣さんらしさを取り戻していて。それに、まだ咲太に甘えきれていない部分があるのかもしれません。
お芝居もちょっと泣いてしまいそうなところを我慢するニュアンスで演じました。きっと私が想像する麻衣さんの状況だったら泣いてしまうと思います。でも私が普通にそのニュアンスを入れると泣いていることが確実になってしまうので、あくまで泣いたことを飲み込んだ後の声にしようと考えて、あとは絵にお任せしようと思いました。
――第2話の最後のホテルのシーン。「私を諦めないでいてくれて、ありがと」というセリフがありましたが、麻衣が言葉に本心を乗せる数少ないシーンだったと思います。
瀬戸
麻衣さんって基本的に強気ではあるものの意外と素直なんです。ちゃんと「ありがとう」も「ごめん」も言えて。だからこそ助けてくれる人が周りにいるんだなと思います。
――理央が咲太の良いところを「“ありがとう”と“ごめん”と“助けてくれ”を言えるのが梓川のいいとこだって」と話していましたが、だからこそきっと咲太は麻衣のことを助けられるのかなと。ただ、麻衣は「助けて」だけがなかなか言えなくて。
瀬戸
たしかに「助けて」って言うのは難しいですよね。それに咲太は自分や妹が辛い経験をしたからこそ、麻衣のことを助けてあげられるんだと思います。
――第3話では、思春期症候群の考察が理央から語られました。思春期症候群を患ったから認識されなくなったのではなく、空気のように扱われていたからこそ思春期症候群を患ったのではないかと。
瀬戸
理央の分析ではありますが、思春期症候群というものがあって、それが病原菌のように降りかかるというよりは、元々備わっているものに反応して生み出されてしまうものなんですよね。だから誰がいつ起きるか分からないですし、視聴者の方からすればもしかしたら自分にも起こりうるかもしれないと。
しかも、物語に登場するヒロインごとに症状も違いますからね。思春期症候群という名のもとに一つに分類されているだけであることが、理央の解釈で明らかになりました。
でも元々備わっているものに反応しているということは自分に原因があって。だからこそ打開策が立てられますし、治すために進んでいけるという側面もありますよね。
――その後は寝てしまうと麻衣を認識できなくなることが明らかになりました。咲太は頑張っていたものの、それを麻衣は彼を眠らせてしまって。
瀬戸
三日三晩寝ないなんて、相当な覚悟がないと無理ですよね。私だったら寝ちゃうと思います(笑)。しかも試験期間中ですし。麻衣さんも、咲太が本当に頑張って無理していたことが分かっていたからこそ、無理をしないでという意を込めて眠らせたんでしょうね。
――また、麻衣が咲太に認識されなくなってからどうしていたのかも気になりますよね。
瀬戸
たしかに、どんな気持ちなんでしょう。咲太の側に居たのかな? 見えないから可能だったとは思いますが気になりますよね。側に居たのか、あえて居なかったのか。でも普通に学校に行ってそうですよね。用紙を配ってもらえないかもしれないけど試験に行くと言っていたくらいなので、普通に生活をしていたから咲太が叫んでいたときも教室にいたのかなと。
だから変に未練がましく側で見ていることはなく、見えなくても麻衣さんなりに生きているような気もしますよね、最後まで強気だったからこそ。だから今想像すると、咲太が叫んでいるシーンを教室の窓から野次馬たちと一緒に見て、降りていった場面が想像できる気がします。
――そして麻衣のお当番回のクライマックスとも言える、咲太の告白がありました。
瀬戸
走って声張ってモノローグでも喋っていて……石川君が大変そうだなと思いました(笑)。走りながらモノローグが流れているので、台本もすごいページ数でしたね。そのシーンが続いた末に校庭で叫ぶというシーンだったので、本当に体力勝負だなとアフレコを見ていて思いました(笑)。
――主人公なので当たり前だとは思いますが、咲太はセリフ多いですよね。
瀬戸
視聴者目線と言っていいのかは分かりませんが、咲太の目線で話が進んでいくので語ることも心の声も人一倍多いです。ヒロインそれぞれに関わっていくので然るべきかなと思うものの、あのシーンはすごかったですね。
――告白されたときの麻衣の感情はどのように芝居に反映させたのでしょう?
瀬戸
咲太から認識されるようになって「そんなに大きな声で言わなくても 聞こえてる」と言うシーンは、わざと照れたニュアンスを含ませようか少し悩みました。でも表情から照れている雰囲気がそこまで感じられなかったので、きっと絵に描かれてないうちに嬉しくて照れていたんだなと私の中では仮定していて。照れた後に気持ちを一度リセットして、また強気で素直になれない表情を浮かべていると個人的に解釈して演じました。
アニメは描かれていない間もあるので、そこをいかに私達の頭で想像して繋げていくのかも大事だと思うので。
――そこで喜ぶようなニュアンスを大きく取り入れないのは少し意外でした。
瀬戸
麻衣さんのことだから内心は本当に素直なんですよ。もちろん嬉しいし照れくさい気持ちがあるはずなのに「ちょっと待って、この場でOKしたら流されたみたいになる」みたいな冷静さが、彼女の新しい一面として出てきて(笑)。だから、本当に好きなら一ヶ月間、毎日言い続けてと咲太に返したんだと思います。
その提案ができるくらい咲太のことを信頼しているんでしょうね。きっと麻衣さんのことだから“ちゃんと信じるためにはこのぐらいのお願いをしなきゃ”という考えもあって、それでもちゃんと遂行してくれる咲太。お互いが相性の良い相手に巡り会えたんだなと思いました。
――総じて麻衣は咲太のどういった部分に救われたと思います?
瀬戸
もちろん麻衣さんにかけてくれた色々な言葉などがあると思います。でも一番は言葉よりも行動で示して側に居てくれたことが、麻衣さんにとって心強かったんじゃないかなと思います。実際にそうは思っていても、実行するのは難しいですからね。それを行動に移せる咲太が側に居てくれたことが大きかったと思います。
――彼女の印象は最初と比べて変わりましたか?
瀬戸
彼女自身が本来持っているものだと思いますが、最初は心を開いていないので隠している部分、先ほど挙げた優しさや思いやりとか、見せられていない部分があると思っていて。ただストーリーが進むにつれて「本当はこんなに年頃の女の子らしい部分もあるんだ」と感じられたのは第一印象との大きな違いだと思います。自分を助けてくれて、信頼できて、好意を持ってくれる人に出会ったことによって、ここから彼女が変わっていくんじゃないのかなと印象が変化しました。
――そんな変わった麻衣がこの後のエピソードでも関わっていくわけですからね。
瀬戸
少し先の話になりますが、中盤は本当にリア充シーンが多すぎて(笑)。こんなに丁寧で繊細な恋愛描写が描かれていて、それを演じるのも初めてでした。楽しい反面、見ている人に楽しんでもらえるのかなという気持ちもありますが、とてもやりがいがあります。
――咲太が麻衣を助けたいと思う原動力はどこから来ると思いますか?
瀬戸
かえでに起きたことが大きな要因になっているんだと思います。そもそも咲太って誰にでも優しいんですよ(笑)。第4話からは朋絵ちゃんの話になりますが、誰にでも優しいなと見ていて思って。そこが咲太のいいところだと思うんですけど、きっと彼女からすればイラッとしてしまうポイントにもなるはずで(笑)。だから優しさは妹を大切にしていた家庭環境が大きいと思います。妹との関係性で優しくすること、困っている人を助けることが彼の根底にあるのかもしれません。
――なるほど。ちなみに石川さんと演技について話す機会は?
瀬戸
アフレコ前に現場で演技について話すことはあまりしませんが、もしやっていく中で分からないところがあれば聞きやすい相手です。同い年で学生の頃からずっと一緒なのは珍しいですし……面白いですね。
――面白い、ですか?
瀬戸
普通に高校の同級生みたいなんですよね(笑)。お互いに頑ななところが今も直りきれてないと思っていて、目標を決めたらそれしか見えないという節があるんです。先輩方に迷惑をかけてきたズなので(笑)。お互いを分析……とまではいきませんが、変わったところやお芝居の仕方とか、勝ち負けじゃないですけど“一緒に関わる役をやる機会をもらったからにはいいお芝居をお互いに出していきたいよね”という戦友のような感覚があるので、自分の中では掛け合うことでよりやる気が湧きますね。勝ち負けを持ち出しかけるところはファイター精神が出てしまう自分の良くないところなんですけど(笑)。
より良い物を作るために切磋琢磨しあえる役者さんなので、それが作品にも活きたらいいなと思います。
――ではアフレコ現場全体の雰囲気はいかがでしょうか。
瀬戸
多数決ドラマ以来となりましたが、当時はそのときの1回きりだったので改めて現場の空気を作っているような気がしています。みなさん協調性のあるお心遣いに溢れた芝居の上手な方ばかりなので、とても和やかでありつつ、緩みすぎず。笑いも起きながらもけじめをつけられる現場なので、変に緊張せずにアフレコに臨むことができています。いい緊張感を保てる現場になっていたらいいですね。
――ここまでお当番回を終えた上で見返してほしいシーンがあればお聞かせください。
瀬戸
きっとみなさん週一で楽しみに見てくださっていると思うので、時間があればもう一度見返して、ご自身の気に入ったシーンを見つけてくれれば嬉しいと思います。
また、収録がどんどん進んでいるので、先のことばかり考えてしまうんですが、本当にこの後も面白いんです! 章ごとにヒロインが変わりますが、第3話まで見て「麻衣さん素敵だな」と思ってくれた人には、まだまだ麻衣さんの見せ場はいっぱいありますから、とお伝えしたいです(笑)。むしろ他のヒロインたちを助けている咲太と一緒にいる関係性が進んだ麻衣さんは、より素敵なので今後の展開にも注目してほしいと思います。
――今後も個性的な面々が登場しますが、麻衣以外に気になるキャラクターを挙げるなら?
瀬戸
本当にみんな個性的なキャラクターばかりで面白いんですよね。きっと第4話を見たら朋絵ちゃんが好きになるし、次に見たら理央が好きになるし(笑)。ひとりひとりが丁寧に描かれているので……難しいなぁ(笑)。みんな好きなんですけど、次は朋絵ちゃんのお当番回なので彼女に注目してほしいです! 女性の視聴者がどれだけいるのかは分かりませんが、次の章では共感してくれる女の子が多いかなと思っていて。
男性は「こういう女の子いる!」と思うはずですが、そこから女の子の内側に抱えている気持ちを掘り下げて丁寧に描かれていると思います。よく喋る子かつ素直で純情な子で、自分の気持ちの変化を押し込めたり、でも押し込め切れずにそれが思春期症候群に反応してしまったりするので、第4話からの朋絵ちゃんに注目してほしいです。
――たしかに朋絵は麻衣とかけ離れたキャラクターですよね。
瀬戸
セリフを読んでいるときに、石川君が言っていたんですけど「麻衣さんと喋っていると咲太から話しかけることが多いけど、朋絵と居ると返事もしていないのに朋絵がずっと喋ってくるから、自分からの発信が少ない」と言っていて、やっぱり人によって会話のキャッチボールが異なるんだなと改めて思いました。そういった関係性にも期待していただくといいのかもしれません。
――では第3話までご覧になったみなさんへ向けてメッセージをお願いします。
瀬戸
原作から読んでいる方、アニメから初めて見る方、それぞれいらっしゃると思いますが、きっと第3話までを見て『青ブタ』にハマってしまっていると思います! 私も制作段階から魅力を感じられるくらい台本が面白いと思っていたので、気に入ってくれる方が多いだろうという自信があります。
そして、この後は朋絵ちゃんにフォーカスしてお話が進んでいきますが、麻衣さんとは違った個性のある女の子です。麻衣さんとの違いも楽しみつつ、ぜひここから最後まで見届けていただけたら嬉しいなと思います。
また、他の子達の思春期症候群にについて触れてはいきますが、麻衣さんと咲太の関係性も少しずつ変化します。そこも丁寧に演じるように心がけていますので、ぜひ見逃さないでいただければ嬉しいです!
――ありがとうございました。