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Special

ヒロインキャストインタビューVol.2
古賀朋絵役・東山奈央

「つまり先輩があたしを大人にしたんじゃん?」

思春期における光と影が共存する
『青ブタ』ならではの魅力

――東山さんが最初に本作に触れたのは多数決ドラマだと伺っています。

古賀朋絵役・東山奈央さん(以下、東山)
はい。初めて本作を知ったきっかけは、2年ほど前に行われた電撃文庫とniconicoのコラボ企画、多数決ドラマのお話をいただいたときです。
タイトルのインパクトかつライトノベルということもあって、ラブコメのような楽しいお話なのかなと思いきや、思春期の悩める若者の気持ちも詳らかに描かれているような印象で、心を動かされるような作品だと思いました。

――若者の心理描写やシリアスな部分を描いている点が特徴的です。

東山
キャラクターの心の闇に一歩踏み込んでいて、思春期症候群で現れる怪奇現象も実際に起きたら本当に怖いなと思う症状が多いですよね。だから、全然作品を知らない人に作品について聞かれると「ミステリーの要素強いかも」のように答えるんですけど、やっぱり驚かれる方が多いんです。

また、エンディング主題歌の「不可思議のカルテ」の音源を初めて聞いたときはビックリして! みんなで歌うと聞いていたので、女の子でワイワイするような楽しい曲なのかなと思っていたら、とてもメランコリックな曲調で「えぇ!?」と驚きました(笑)。でもよくよく考えてみたら、『青ブタ』の魅力ってそこだと思っていて。女の子たちの等身大の部分と言いますか、観ている人たちも共感できるところがたくさんあると思うんです。あとは、恋愛要素もあって華々しいところも見どころですよね。
特に麻衣さんと咲太のやり取りは見ていて本当にラブラブしているので、いいなって思うんです! なので「いいなぁ」という学生生活の明るい部分と、人知れず悩んでいる気持ちを掘り下げる影の部分、どちらも同時に存在していることが本作の魅力だとアフレコを通して感じました。

――思春期症候群もキャラクターの心理描写に踏み込む上で重要なファクターとなっています。

東山
基本的にリアルなお話にファンタジーが少し入ってくることによって、観ている側もキャラクターと同じく焦燥感を感じつつ、自分に置き換えて考えられると思いますし。その点も、みなさんに感情移入をしていただけるんじゃないかなと台本を読んでいて思いました。

――今回のエピソードでは、朋絵が今どきの高校生ならではの悩みを抱えていて、より感情移入しやすい場面が多かったのかなと思いました。

東山
思春期症候群は我々が生きていく中で、きっと起こらないじゃないですか。だから心に負った傷はそのままだし、悶々と悩んだことを引きずったまま大人になっちゃうことも普通にあると思うんです。
でも思春期症候群を患って、なんとか解決しないと日常に戻れないというハードルが課せられたことで、乗り越えるきっかけを与えられている気がします。もちろん、その渦中にいるときは大変だと思いますが、みんな頑張って乗り越えている姿は「もしも自分があのとき、こうしていたら」と視聴者の方も新しく思える機会になるんじゃないかなと。色々な要素において深い作品ですよね。

――東山さんからご覧になった朋絵の第一印象は?

東山
朋絵は、人付き合いをよくしなきゃいけないという一昔前の私に似ているなと思いました。ただ、私は人の顔色を窺いつつも、ひとりの時間も楽しめちゃうタイプなんですけど(笑)。彼女は“ひとりでいることは恥ずかしい”という考え方の持ち主なので。

私は悩んでいても「まあいっか!ひとりが楽だし!」とケロッとしちゃうタイプですが(笑)。そこで割り切れない分、朋絵は日々悩んでいたんだろうなと思います。スマホを片時も離せないところは、いかにも現代らしいと言いますか。私が学生の頃はケータイを持っていなくても「あー、そうなんだ」みたいな周りの反応の世代でしたが、今はもう中高生はケータイを持っていて当たり前の時代になりましたからね。便利で敷居が低くなった分だけ交流を求められることもあるでしょうし、これだけSNSが普及している時代に学生だったら、もしかすると私も朋絵みたいに悩んでいたかもしれません。
もはや強迫観念のようなものですよね。早く返事を返さなきゃとか、話題を合わせるために自分の興味のないものも睡眠時間を割いてまでチェックしたり、結果的に忙しくなっていて観ている方がいたたまれない気持ちになりますよね。

――その点は咲太と対照的ですよね。今回のエピソードを経た上で咲太の印象は?

東山
個人的には、もう……咲太のことを好きになっちゃうよねって思っちゃいました!
学校生活のスタートが咲太の場合は色々とあって上手くいきませんでしたが、普通にしていたら絶対にもっと友達もできただろうなと思うくらい周りのことを見ているじゃないですか。高校生なのに、相手が何を求めているのか、どういう言葉をかけてあげたら前に進めるかをとてもスマートにこなしてくれるところがカッコいいなと思って。もう朋絵も好きになっちゃいますよね。

――ちゃんと空気が読めている上で、咲太はあえて読まないという選択をしますからね。

東山
空気の読みどころと、あえて読まずにマイペースに進むところをわきまえている雰囲気がカッコよく映りますよね。
ただ、麻衣さんがいるから朋絵にとっては叶わない恋なのは最初から薄々分かっているけど、一縷の望みをかけてループするところも、本当に一途で、どこか痛々しくて……。

「いざ朋絵のお当番回を迎えたら
(咲太と)全然
噛み合わなくて!(笑)」

――朋絵を演じる上でのポイントについてお聞かせください。

東山
やっぱり朋絵は元気担当かなと思っています。それを感じたのが、先ほどお話しした「不可思議のカルテ」のレコーディングです。
私がトップバッターだったので、曲に合わせて私もメロウな雰囲気、彼女のモノローグ的な感じで新しい一面をお届けするつもりで臨んだら、「こういう曲ですけど、明るく歌ってください」とディレクターさんに言われてしまって(笑)。ちょっとウィスパー気味にしっとり歌おうかなと思っていたところ、朋絵らしい元気いっぱいなテイストになりました(笑)。

すごいワクワク顔で歌っていて「いいのかな?」と思ったんですけど、それぞれのヒロインには特徴があって、全員の声が揃ったときに改めて朋絵は元気担当だと実感して、そこからアフレコに臨みました。

――レコーディングが先行していたんですね。そこで朋絵を作りつつ、アフレコに持っていったと。

東山
あと、視聴者の方は既に知っていると思いますが、彼女は表情がコロコロ変わるんです。咲太と掛け合っているシーンでは、絵の表情にアクセントをつけていただいていたので、声をあてながら細かいアクションもつけてお芝居しました。
でも咲太は、麻衣さんや理央と掛け合っているシーンが多かったじゃないですか。アフレコのときは、まさにつうかあという雰囲気の間合いで喋っていて、みなさんの背中を見ながら「良い会話のテンポ感だな」「心地いいな」と聴いていたんです。なので私も(石川)界人君と掛け合えるの楽しみだなぁと思いつつ、いざ朋絵のお当番回を迎えたら(咲太と)全然噛み合わなくて!(笑)

――噛み合わなかったんですか!?

東山
今まで界人君とは共演も多かったので、どうしてこんなに会話がギクシャクするのかが不思議で、何がいけないんだろうと思っていました。でも、何がいけないというわけではなくて、そもそも朋絵と咲太がそんな関係性なんだなって後々気がついて。
アフレコのとき、瀬戸(麻沙美)ちゃんに「聴いててどう? 噛み合ってるかな?」と聞いたら、若干噛み合っていないけど、それでいいのかもと言われて、そこで「たしかにそっか」と思いました。朋絵が麻衣さんと同じようなテンポで咲太と会話できていたら、それはそれで違うのだろうな、って。
やっぱり咲太と麻衣さんは、通じ合うものや惹かれ合うものがあるのかなと。会話のやり取りは高校生ですが、頭のいいやり取り……ユーモアのある言葉の応酬……というか言葉で乳繰り合ってるようで(笑)。

また、理央ともテンションがマッチしていて、落ち着いた雰囲気で頭の良い会話をしているんですよね。普通、量子力学のことを言われても、すぐに分からないと思うんですよ。それなのにテンポよく会話が前に進んでいくことから、気が合っていることが分かるんですよね。

一方の朋絵はしっぽを振りながら咲太のところに行っていて。ちょっとツンツンしているところもありますが、そのツンデレすら分かりやすくて、もはやツンなのかよく分からない可愛くてコロコロした雰囲気を持っているんですよ。対する咲太は、そんな朋絵を受けて入れてないと言いますか……。

――そこはあえて空気を読まない咲太の特徴が出てる?

東山
そうかもしれませんね。麻衣さん一筋過ぎて見向きもしない。打っても打っても響かない、掛け合いしているけどしていない感じ。それは私の感覚じゃなくて、朋絵の感覚として受け入れていいんだとアフレコを通して分かったような気がします。

――かと思えば、咲太の優しさがちょっと思わせぶりなところもありますよね(笑)。

東山
アフレコ現場でも朋絵の回のときだけ、みんなが「咲太を嫌いになりそう!」と話していて(笑)。朋絵が一生懸命な分だけ、感情移入してくれる人たちが多いんです!
咲太が「古賀…。よく頑張ったな」と言っていたシーンも、「どの口が言うねーーーん!」みたいに!(笑) 女性陣から「キーッ!」という声が聞こえてきそうな雰囲気に、朋絵のお当番回のアフレコはなりがちでした(笑)。

――ふとした瞬間に朋絵は地元の博多弁が出ますよね。今まで博多弁のキャラクターを演じることはありましたか?

東山
なかったと思います! 福岡にイベントに行かせていただく機会があったので、そのときに現地の方の真似をしてご挨拶することはありましたが、ちゃんとした役柄として演じることは初めてでしたね。
私の中では方言の中で、女性が一番可愛い方言は博多弁、男性が一番素敵な方言は京都弁だと思っています。女子は「ばりすいとーよ」みたいな言い方が可愛いなと思っていて! なので朋絵は、博多弁を話す女の子として私の中でのストライクゾーンです。

ただ、馴染みのない言葉、例えば「いっちょん分からん」も私の想像していたイントネーションとは異なっていたんですよね。これがなかなか馴染めなくて、アフレコで毎回指摘されていた気がします(笑)。
ただ、いつも隣に座っている種﨑敦美さんが福岡県の近くの大分県出身ということもあって教えてもらったり、練習に付き合ってくれたりしました。

ちなみに、第5話の「先輩そがんことも知らんとね」というセリフがとても難しかったんです!
最後の「ね」のアクセントが下がるんですけど、「先輩そがんこと↑も↓知らんと↑ね↓」というように教えてもらいました。
彼女には「大分県と福岡県はちょっとだけ離れてるから、正解かどうか分からないけど……」と謙虚に教えてもらいましたが、東京出身の私からすると九州エッセンスを学べるということは、とてもありがたい経験でした!
そんな憧れの博多弁女子を、少しでも可愛らしく演じられていたらいいなと思います。

朋絵が唯一、
本音で話すことができた存在

――ここからは大きく第4〜6話までを振り返っていこうと思います。第2話で咲太と会ったときから明らかでしたが、朋絵はクラスのグループと足並みを揃えること、女子グループ独特の雰囲気に気を遣っている女の子です。同じグループの女子が好意を寄せている前沢先輩に、告白されるところを咲太が目撃します。

東山
友達の好きな人に告白されたとしたら、本当に悩みますよね。
その時点で詰みというか、どう断っても禍根が残る気がします。受け入れることは選択肢にないとしても、友達至上主義で過ごしてきて、自分の平和を守るために友達に合わせていただけなのに、それがきっかけで友情が壊れるなんて正解が分かりませんよね。
ただ、玲奈ちゃんと一緒に過ごしていて、本当に楽しかったのかなとは思っちゃいます。背伸びして高校デビューしてしまったため、本当に自分の心根と合う友達のグループにうまく入れなかったのかなって。

――後に教室で咲太と出会うわけですが、彼と接するときと、他の友達と接するときの朋絵は意識して演じ分けをされていましたか?

東山
はい。友達と話すときは話を合わせるようにしていて……笑顔が張り付いている感じと言いますか。本音では話していなくて、太鼓持ちっぽいニュアンスを込めていました。
アドリブで会話のシーンを演じる機会もありましたが、やっぱり基本的に同意するセリフばかりでしたね。

――自分の具体的な意思は明かさず、相手に合わせる?

東山
第5話、第6話の話になりますが、自分の恋心は隠していたにせよ、ほとんど本音で話していたんじゃないかなと思います。たまに麻衣さんとの関係を探るようなこともしていましたが、楽しいときは心から笑っていたはずです。
もし朋絵が周りの友達に失礼なことを言われたとしたら、きっと怒れないと思うんですよね。「へへへ〜、そうだよね〜」「私そういうところあるからな~」みたいに、はぐらかしちゃうと思います。
でも咲太にはガツンと言い返していました。しかもイジられてもまんざらじゃない、みたいな。怒っても結局は楽しんでいるところは、演じる上でも感じられました。

――どうして朋絵は咲太にだけ素の表情を見せていると思いますか?

東山
最初は深く考えていなかったと思うんですよね。
お尻を蹴り合ったり、最初に思春期症候群に巻き込まれたときは何も感じなかったと思うんですけど、麻衣さんという存在がいるにも関わらず朋絵に親身になってくれる。偽の恋人関係もありましたし、自分の力になってくれた咲太に「この人なら信じられる」という頼もしさを感じていたからなのかもしれません。

――その信頼が好意に変わっていったと。

東山
でも、その変化も切ないですよね。
年下の後輩って普通は恋愛対象の圏内だと思うんですけど……勝手に妹に重ねられて!(笑)

一同
(笑)

東山
傍から見ると、勝手に重ねられているだけなのに、その時点で恋愛の芽を摘まれているじゃないですか!
ただ、そのことを朋絵自身は知らないまま、がむしゃらにアピールをしていて、そこがまた切ないですよね。

――思わせぶりなセリフもありましたから(笑)。

東山
朋絵にも優しくしてくれるんだったら、希望があるのかなって思っちゃいますよ! 
その点で言えば、海辺のやり取りが好きなシーンでもあり、顕著に表れている部分でもありますよね。

咲太「あんまり見てほしくないんだろ? ま、可愛いと思うぞ」
朋絵「か、かわいいっていうな」
咲太「じゃあ、なんて言って欲しいんだ?」
朋絵「…か、かわいい、かな…」
咲太「古賀は情緒不安定なのか?」
朋絵「乙女心はそういうものなの!」

という……ここです! ここ!(笑)

――やり取りが完全にカップルですよね(笑)。

東山
そうなんですよ~! しかも水着を下に着込んでいる朋絵の「…先輩、目がエロい(朋絵)」「知ってる(咲太)」「あんまり見ないでって意味(朋絵)」というやり取りも、「絶対にそういう意味で見てるじゃんよーーー!!!」……みたいな(笑)。
「その気がないならそんな言葉遊びしないで!」「勘違いしちゃうじゃん!」って思うこともありましたけど、咲太が言うと許せちゃう気もしますよね。

――たしかに(笑)。

東山
しかも、そのシチュエーションは麻衣さんなら反撃するんでしょうけど、朋絵は照れちゃうんですよ。
麻衣さんだったら「もっと褒め言葉あるんじゃない?」「私じゃなくて水着が可愛いの?」みたいに反撃してきそうですけど、朋絵は照れちゃう。照れて頬をポッとしつつムスッとしている、そんな性格の違いも見どころですよね。

――また、女子グループに所属していることに安心感を見出している反面、ついていくことが大変でジレンマや悩みを抱えていることも徐々に明らかになりました。

東山
朋絵の安心感に関して言うと、個人的には玲奈ちゃんたちのグループじゃなくても良かったと思っていて。きっと朋絵にとっては、社会的体裁が保つことができればそれでいいのかなって、極論ではありますが考えてしまいますね。

――ちなみに東山さんが悩みを抱えたときは、どのように解決していますか?

東山
私が悩んだときはわりと相談すると思います。自分の持っているデータバンクなんて本当に小さいものなので、色々な人から聞いてこういう例もあるらしいと参考にしていて。
でも結果的には決めるのは自分ですね。ただ最後の最後で、結論がひっくり返ることもままあります。

――柔軟に変えられるのは、なかなか難しいことだと思います。

東山
でも、今まで聞いてきた大多数の人たちの意見をひっくり返してしまうとなると、そこは多数決じゃなくなることもありますし。なので、私が相談する際は人の意見を聞いて、自分の中で総合して決めることが多いですね。
となると、私は自分の意見があまりないのかもしれません(笑)。
どうしても譲れないところ以外は、それでもいいのかなと思いますね。プライドがないことがプライド、みたいな。

本当の自分と憧れている自分

――そして、朋絵と咲太の偽りの恋人関係が始まりました。デートで水族館に行くシーンが見られましたね。

東山
基本的にデートなので楽しい雰囲気ですが、「あたしは違う。後ろから着いていってるペンギン」というセリフから分かるように、どこか切ないエッセンスも盛り込まれているんだと思って。

――また、朋絵はジレンマを抱えつつも、今の自分を気に入っていることも告白します。

東山
「本当の自分はこんなんじゃない」と朋絵が思っていることを、咲太に打ち明けたセリフがありました。本当の自分は地味だけど、努力をして憧れだったキラキラな女子高生になったのだと。
そもそもどっちが本来の自分なのかなって。個人的には、なりたい自分が本当の自分だと思います。
スタートこそ地味かもしれませんが、華やかな学生生活に憧れて、今の自分が好きだと言えるなら、今の朋絵が本当の朋絵なんじゃないのかなって。

そうじゃないと、極論ですけど、「おぎゃあ」と生まれてきたありのままの自分だけが、本当の自分です、という話にもなりかねない。何をカッコいいと思うか、それが本当の自分に繋がると思います。

――なるほど。

東山
例えばまだ高校生とかで、何者にも染まれる時期に、自分が何に憧れを持っているか。いつも背筋がピンとしている先輩をカッコいいと思うのか、ちょっと斜に構えている先輩をカッコいいと思うのか。また、質素倹約に過ごす先輩がカッコいいと思うのか、お金を費やしてでもコレクター精神をまっとうしようとする先輩をカッコいいと思うのか。
きっと今の自分は、青くて、若くて、何もないのかもしれないけど、何をカッコいいと思うか、そこに本当の自分が存在しているんだと思います。今のあなたではなくて、あなたがカッコいいと思うもの。

周りを見ていても今回の台本を読んでいても私はそのように思ったので、朋絵は朋絵で昔の自分と違うギャップに苦しむ必要はないし、今の自分で誇らしく学生生活を謳歌したらいいんじゃないかなと、ちょっとした親心として思っています。

――また、「本当の自分はこんなんじゃない」という胸の内を明かしたセリフを咲太に言ったことから、朋絵の中で咲太が大切な存在になったことが改めて分かるシーンなのかなと。

東山
たしかにそう思います。アフレコのテストのとき、そのシーンは笑顔を含んでいるニュアンスで会話をしていたんですよ。
「クラスでも目立たないグループにいたし、東京じゃダサいって言われて友達なんかできなくて絶対いじめられると思った。だからいろいろ研究したの」というセリフで、ちょっと明るめに演じていて。でも本番に行く前に「もう少し暗い声色で」と言われたんです。
朋絵は気を遣う子だから、水族館の後の楽しいテンションから最後で暗い雰囲気にしちゃったら悪いかなと気を遣って、テストのときに「私ってこういうところあるからさぁ」とわざとヘラヘラしている感じで空気を重くしないようにしていました。でも、ディレクションでは暗くていいよと言われたことで「咲太には暗い一面を見せていいんだ」と気がついて。

きっと咲太に対しては朋絵の中でいい意味での甘えがあって「気を遣わなくてもいいんだ」「暗い空気なっちゃうなら、それでもいいんだ」と。朋絵としては新境地だと思いますし、そういう吐露の仕方をしていいんだなと発見できた瞬間でした。

――保健室で寝ている朋絵の元を咲太は訪れましたが、そこではふたりの対人関係における考え方の相違点が見られました。朋絵は“誰からも好かれたいというより嫌われたくない”、咲太は“世界中に嫌われたとしても、ひとりが必要とさえしてくれればいい”という。

東山
どっちも分かるな~。両方共アリですよね。
ふたりは極端に言っていますけど、誰しも両方の気持ちを持っていると思うんですよね。できることならみんなに好かれたいけど、現実的な話で言えば相性が合わない人もいるから、嫌われちゃうことも苦手な人も存在していて。

全員から嫌われてもいいなんて人はいないと思いますし、きっとどんな人も両方の気持ちを少なからず持っているはずだから、このふたりの考え方に対して共感していただける部分が、みなさんにも少なからずあったんじゃないかなと思います。

感情渦巻く朋絵の恋心と
咲太のベストアンサー

――咲太と前沢先輩との衝突も見られましたが、彼はカッコいいことをやってくれましたね。

東山
気持ちよかったですね! 日々の中でこれだけスカッと言い切ることはできませんよね。

――きっと視聴者の方はスッキリしたと思いますし、朋絵も救われた部分があったのかなと。そのあとの「先輩、やりすぎ!(朋絵)」「知るか!(咲太)」「絶対、やりすぎ!(朋絵)」のやり取りも印象的でした。

東山
ここが私はすごく好きで!
家で練習したときは「やりすぎ!」ってセリフに少し怒るようなニュアンスを込めていたんです。だって玲奈ちゃんも見ている中で前沢先輩にヒドいことを言ったら、痛快感もあるけど「ヤバい!」という感情もあるのかなと思ったんですよ。
だけど咲太が爽やかに朋絵をさらっていったので(笑)。

咲太も「ハハハ」みたいに楽しそうにしていたこともあって、アフレコでは私もいつの間にか笑って返していて、そのままOKが出たんです。咲太もそうだし、界人君もお芝居で引っ張ってくれた気がしていて、このシーンは大好きです。

――最初に咲太との会話は噛み合わないと言っていましたが、このシーンは噛み合いました?

東山
ここはお互いにシンクロできたんじゃないかなと思っていて、演じていてもすごく楽しかったです! これは……もう青春ですよ!(笑)

――そして、朋絵は思春期症候群を再発してしまいました。咲太とは友達に戻らなくてはいけないという理性と、恋人になりたいという本心の板挟みが感じられました。

東山
ここからのお話は私の個人的な解釈になりますが、朋絵はいい子なので自分の気持ちをなかったことにしようとするんですよね。麻衣さんがいるのに、咲太のことを好きになってしまって。さらに自分が好きな咲太は麻衣さんのことが好きだから、その恋路は邪魔しちゃダメで。そこで咲太に抱く好意すらすべて否定して、なかったことにしよう。友達に戻ろう。親友になろうと約束した末、きっと無意識にループが起きたんじゃないかなと。
だから一瞬だけえてしまったんです。最初にループを隠したときに、もしかしてズルい朋絵がいたのかなって。

――ズルい朋絵?

東山
繰り返しているうちは、咲太は麻衣さんのところに行かないで朋絵の元に来てくれるからとか、そんな気持ちになってしまったのかなと。
でも後半まで行くと、そんなこと朋絵は考えてなかったんだなって。朋絵は本当に早くループを終わらせたいんだと思っていることが分かりました。
きっと朋絵が陥っていることは自己嫌悪で。だけど、自分が否定していた気持ちを咲太が肯定してくれたからこそ、前に進めたのかなと思います。

――朋絵が忘れようとしている好意に対して、咲太が「そんなことしなくていい」と言い放ったシーンですね。

東山
このクライマックスのシーンは、演じる上でも難しかったです。朋絵の中で色々な感情が入り混じっていて、彼女自身いっぱいいっぱいになっていて。自分で自覚しているところも、あったりなかったり。様々な朋絵が存在しているんだと思いました。もしかすると、自分に芽生えてしまった恋心を否定しながらも「もしかしたら好きになってくれるかもしれない」と、すがるような気持ちがあったのかもしれませんね。

――たしかに、期待しているところもあるのかもしれません。

東山
だから台本を読んでいても難しくて(笑)。
5ページ分くらい朋絵がずっと喋っていてコロコロと気持ちが変わっていますが、「嘘は本当にならないし、本当は嘘にならないんだ」と咲太に言われてしまいました。その後の「…百回やっても?」「…千回やっても?」「一万回でも?」は、ひょっとしたらを期待している自分が存在しているのかなって。

だけど「忘れようと決めて…なのに忘れられなくて…今度こそ忘れようと思ったのに、ダメだった。この気持ちとさよならしようって決めたのに!」というセリフ、これも間違いなく本心なんですよね。
親友になるんだと強く決意しながらも、気持ちは消せなくて……。自分を脅迫していますよね。忘れなきゃダメ、しなきゃダメ、なかったことにしなきゃダメだ、と。

ループをしている朋絵自身、毎回同じことを咲太に言わないといけませんし、とてもツラかったと思います。

――「先輩のバカ! バカ! 嫌い、大嫌い! でも…でも…好き…」というセリフは、朋絵の色々な感情が渦巻いた末に出てきた言葉なのかなと。朋絵自身、咲太が大好きで、その分の苦しさも感じていて。

東山
最初にループを隠していたのは、自分の抱いた恋心を隠していたかったのかなと考えています。“忘れなきゃ”という感情と“私を好きになってほしい”という感情。どっちも本音だと思いますが、咲太には知られたくなかったんだと解釈して演じていました。

芝居の上では「好きになってほしい」よりも、「本当に打ち消したい」という思いが強かったように思います。
「なのに…なのに…どうして明日になってくれないの!」と、ここで一番感情が爆発したのは、恋心をなかったことにすることが今の彼女にとって一番したいことだったからだと思うんですよね。

例えば、そこのセリフが「どうして好きになってくれないの?」だったら意味合いが変わってくるんですけど、「どうして明日になってくれないの!」だと打ち消そうとしている気持ちの方が強く、芝居にも感情を大きく乗せて演じることになりました。

――理性の方が強かったわけですね。

東山
朋絵はいい子で理性があるから、好きになってほしいというより、明日になってほしいという言葉が出たのかなと。
……ただ、こればっかりは鴨志田先生に聞いてみないと分かりませんね(笑)。「いえ、朋絵は振り向いてほしかったんです」と言われたら本当にごめんなさいですけど、でも私は朋絵のことをまっすぐで理性のある女の子なんだと、そう思っていました。

――そんな朋絵に対して、咲太は好意を真正面から受けました。

東山
これは衝撃的でしたね。自分が否定してきた想いを、まさかの相手が肯定してくれたわけですからね。
「先輩なんて嫌い、大嫌いっ! 先輩がいけないんじゃん! あたしにいっぱい優しくしたからっ!」と言った朋絵の心の内側には、起承転結の転があったと思うんです。
「迷惑じゃないの?」「こんなにも自分の好意をずっと否定してたのに、想ってもいいんですか?」って。

――朋絵にとっては論外とも言える結論を咲太はひっくり返したわけですからね。

東山
でも“俺のこと好きだっていいんだぜ”って言っているわけですよね、ちょっと憎いじゃないですか(笑)。そんなところは嫌いだけども、咲太が肯定してくれたことで許されていくような感覚もあったんでしょうね。
「先輩のバカ! バカ! 嫌い、大嫌い! でも…でも…好き…」のセリフに繋がったのかなって思います。

……でも、咲太のこのセリフ、今思うと本当によく言えるなって思っちゃいますね(笑)。ただ、この場においては、これ以上ないベストアンサーだったと思います。

「つまり先輩があたしを大人にしたんじゃん?」

――ここまで振り返ってきましたが、改めて見返してほしいシーンを挙げるとすれば?

東山
咲太との関係の中で、朋絵が募らせていった想いを改めて感じてもらえたら嬉しいなと思います。あとは麻衣さんと咲太の掛け合いと、朋絵と咲太の掛け合いで彼の居心地が違う点も意識していただけるといいのかもしれません。
朋絵を演じている私からすると悔しいですが、“やっぱり違うよね”という会話の温度感も改めて感じていただけたら、より本作を楽しんでいただけると思います。

もちろん、これからも様々な青春群像が展開されていきますが、朋絵の話はここで一段落しました。第7話以降も『青ブタ』のミステリアスな要素も楽しんでいただきたいですし、どのように終わりを迎えるのかも見届けていただければと思います。
また、咲太と麻衣さんは早々にカップルとなりましたが、おちおちとイチャイチャさせてくれない事件も起こったりします(笑)。咲太と一緒に推理しながら観ていって、より本作を楽しんでいただけると嬉しいです。

――最後に本エピソードを通して東山さんが感じた朋絵の魅力をお聞かせください。

東山
真っ直ぐで、一途で、健気なところが朋絵の良さで「こんな子が本当にいたらいいな」「好きになっちゃうな」と考えてしまうような後輩像だと思います。

結果として、朋絵の恋は成就できませんでしたが、こういう子だからこそ最後には笑っていてほしい。最後にはこういう子が笑うんだぞと、そう思えるような結末を迎えてほしいです。
実際、朋絵は新しい友達を見つけて、幸せになるための一歩を踏み出せたのではないでしょうか。
今回は切なさ成分が多めのストーリーでしたが、この出来事があったからこそ、もっと素敵な青春時代を送ることができて、いい大人になっていくんだろうなと朋絵を見て実感しました。

朋絵的に今回のストーリーを言い表すのなら、「つまり先輩があたしを大人にしたんじゃん?」という感じでしょうか。
痛みの伴う成長でしたが、前に進めたのは咲太のおかげだと思います。これからも朋絵を応援していきたいです!