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ヒロインキャストインタビューVol.7
牧之原翔子役・水瀬いのり

『ゆめみる少女』で描かれる
大人翔子ならではの優しさと
中学生翔子が願った未来

『ゆめみる少女』のタイトルが意味するものとは

※大人翔子は“翔子さん”、中学生翔子は“翔子ちゃん”と表記

――ヒロインキャスト座談会にて、水瀬さんは翔子のことを“ヒーローっぽいヒロイン”と言い表していましたが、『ゆめみる少女』を通してそのイメージは変化しましたか?

牧之原翔子役・水瀬いのりさん(以下、水瀬)
大きくは変わらず、とても強い人だと思いました。
大学生の“翔子さん”と、中学生の“翔子ちゃん”は性格も含めて別の存在だと考えていて、その中でも翔子さんは、どこまで行ってもヒーローなんですよね。とても上手というか、咲太の考えていることを理解した上で先手を打つところもあって、それも含めて彼女はヒロインというよりヒーローだと今でも思っています。

また、とにかく翔子さんは小悪魔というか、どこか思わせぶりな態度だったり、からかうようなニュアンスも多い性格なんですよね。でも、翔子ちゃんが抱えているものを見ていくと、裏付けされた翔子さんの性格や内面に頷ける場面も多いんです。

――その裏付けされた部分をはじめ、ベールに包まれていた翔子の秘密が『ゆめみる少女』では明らかになります。

水瀬
この作品のタイトル中にある“青春ブタ野郎”という言葉の意味と、物語の中のシリアスさが良いギャップのように感じつつも、原作を読んでからは決して一筋縄ではいかない物語だと思いました。

また、“ゆめみる少女の夢を見ない”というタイトルだけを聞いても、(原作未読の方は)それが何を表しているのかは分からないと思いますが、本編を観ていただけると本当の意味を理解していただけるはずです。個人的には今作のタイトルを受けて、それぞれのヒロインの形があるんだと改めて実感しました。

――先ほどお話にもあったように、“翔子さん”と“翔子ちゃん”として、今作では様々な年齢の翔子が登場しますが、それぞれの役作りはどのように意識して臨んだのでしょうか。

水瀬
実は、意識的に「大人っぽくするぞ」「子供っぽくするぞ」と変えることはありませんでした。同じ翔子でも、翔子さんが「咲太君」と、翔子ちゃんが「咲太さん」と呼ぶ際に、自然とそれぞれの年齢感がセリフ乗るんです。だから、芝居として年齢感を意識せず、むしろセリフを読むタイミングで自ずとふたりを演じられたと思います。

特に翔子さんを演じるうえでは、私の今の年齢が彼女に近いことや、作品の内容的にナチュラルな芝居がマッチすることもあって、決して作り込み過ぎずに自然体で演じました。

――ということは収録はスムーズに?

水瀬
そうですね。TVシリーズと同じスタッフの方々ということもあり、大きなディレクションもなくスムーズに収録を終えました。

ただ、とてもシリアスな内容なので、物語が進むにつれてキャスト陣のテンションが引っ張られていくんですよね。1日がかりの収録ということもあって、夕方になると過酷なシーンも増えて徐々にみんなの雰囲気がおとなしくなり、録り終わる頃にはやりきった感が出ていました(笑)。ただ、それほどまでに、みんなで作り上げた達成感を強く感じられた収録でした。

出会いを経て生まれた
咲太の新たな気持ちと、
その先に待ち受ける分かれ道

――水瀬さんは咲太について、江ノ島・湘南っぽい都会過ぎない素朴な雰囲気が彼の良さだとヒロインキャスト座談会で話していましたね。

水瀬
TVシリーズを見ていると、咲太は落ち着いているシーンが多かったり、心の中で毒を吐いていたりして、クールでちょっとスカしてるイメージが強かったんです。でも『おるすばん妹』で取り乱した姿を見て、彼も人間らしいところをいっぱい持っているんだなと思い、咲太というキャラクターを見つめ直すきっかけになりました。

――そんな咲太ですが、今作ではどのような印象を受けましたか?

水瀬
翔子に出会い、麻衣に出会い、様々な人に出会ったことで、生まれた咲太の中の新しい気持ち、そして咲太の身に起こる最大のピンチは印象的でした。

咲太の中での葛藤だったり、苦悩だったり、喚くシーンだったり……大事なものが増える度に抱え込んだ末、すべてを抱えきれなくなってしまったという残酷さを含めて、咲太が道を選んだシーンは胸が苦しくなりました。

また、翔子が存在する意味や、麻衣と出会った意味、これまで過ごしてきた時間が、咲太の中に築かれているんだと感じるほどに内面的な部分が表れています。TVシリーズでは見られなかったようなシーンもたくさん描かれているので、ご覧になる方にとってはその点も見逃せないポイントだと思いました。

――また、TVシリーズの翔子さんは咲太の前だけに現れる存在でしたが、今回は麻衣も交えた3人が中心に物語が展開していきます。咲太役・石川界人さんと、麻衣役・瀬戸麻沙美さんの掛け合いは、翔子さんを演じる身からご覧になっていかがでしたか?

水瀬
ふたりはTVシリーズで試練や苦難を乗り越えてきた主人公とヒロインという役どころなので、良い意味で台本を読みながら演技をしているような掛け合いには聞こえないと言いますか。素の咲太と麻衣として、自分たちに役を降ろしているように感じました。

その間に入りながら翔子として演じられたことは、個人的に嬉しかったんですよね。TVシリーズで咲太と喋るときはふたりきりの状況でしたし、麻衣と喋るシーンに至ってはほとんどなかったので、収録現場では後ろから見ていることが多くて。だから、今作では翔子さんとして、ふたりと掛け合いをすることは新鮮でした。

――ふたりの関係性もTVシリーズに引き続き、見どころのひとつだと思います。

水瀬
そうですね。TVシリーズの頃から思っていましたが、ふたりはとても難しいやり取りをしているなと思っていて。麻衣も一筋縄ではいかない小悪魔的な部分を持ち合わせていますが、咲太はそれに対して平然と応えていて……「ふたりはどういう気持ちで喋っているんだろう」「不思議なカップルだな」と思いながら見ていました(笑)。

私は人に対して思ったことを言ってしまうタイプなので、本心を隠しながらなんとなく察するふたりは、ある意味で大人っぽいふたりなのかな、と。ただ、そのやり取りは高度過ぎて私としては見ていてドギマギしちゃうんです(笑)。

――相手を困らせるような言葉に対し、それを上回る言葉で平然と応酬をしていて……朋絵役の東山奈央さんの言葉を借りるなら「言葉で乳繰り合ってる」でしょうか(笑)。

水瀬
たしかに(笑)。
でも、さっぱりしているように見えて、予期せぬタイミングで糖度が高めの甘いやり取りが飛び出すので、もう……「お幸せに」って感じです(笑)。

「『青ブタ』に触れることが
自分を見つめ直すきっかけになる」

――『ゆめみる少女』では、翔子のどういったところに注目してほしいですか?

水瀬
とても重厚なシナリオかつ、これまで謎に包まれていた翔子というキャラクターがしっかりと描かれた内容なので、より彼女のことを好きになっていただけるはずです。
その中でも、様々な翔子が登場するところは見どころだと思います。翔子ちゃんを軸にした翔子さんが描かれているので、ぜひ翔子ちゃんが願った未来に注目して観ていただけると嬉しいです。

――翔子のお当番回にあたる今作を経て、水瀬さんが感じた彼女の魅力について教えてください。

水瀬
ひとりの女の子ではありますが、頼もしさや強さを持った人物ですし、翔子が翔子として存在していることに、尊さのような感情を持ち寄れるような気がしました。

また改めて、翔子さんはとても優しい人だと思いました。「分かるよ」「大丈夫だよ」と声を掛けることだけがすべてではないところに、大人としての優しさが感じられて。

きっと純粋だからこそ、まっすぐだからこそ、咲太の心の中にある傷に寄り添うことができたんだと思います。常に自分のことよりも相手のことを優先するような人なので、咲太を導く姿からは優しさや温かさを感じましたし、そこが彼女の魅力なんだと実感しました。

――では『青ブタ』シリーズの魅力はどういったところだと思いますか?

水瀬
自分と他人を比較したり、将来なりたいものが一気に芽生えたり、自分じゃないものに変わることを恐れたり、喜んだり……思春期ならではの悩みがきっかけで、これまでのヒロインたちは思春期症候群を発症していて。きっと誰もが抱えている気持ちが原因になっているからこそ、キャラクターに共感できたり、寄り添うことができるのかなと思います。

『青ブタ』は、そんな思春期特有の感情に対して「大人になるために通る道として正しいんだよ」と証明してくれる、背中を押してくれる気がしているんです。
「昨日のわたしよりも、今日のわたしがちょっとだけやさしい人間であればいいなと思いながら生きています」という翔子のセリフのように、『青ブタ』に触れることが自分を見つめ直すきっかけになる、そんな魅力を含んだ作品だと思います。

――最後に、公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

水瀬
TVシリーズを観ていただいた方は、きっと私以上に『青ブタ』の良さを理解していると思いますが、そんなみなさんに損をさせないような作品になっていると実感しています。私たちキャスト陣としては、誰ひとりとして力を抜くことなく、全力でぶつかり、作品に向き合ってお芝居しました。

原作ファンの方には『ゆめみる少女』が映像化する喜び、そしてTVシリーズで初めて触れた方には『青ブタ』が何を伝えたい作品だったのか、それぞれ胸に届くような内容に仕上がっています。

性別年齢問わず、様々な方に楽しんでいただけると思うので、家族や友人、恋人と一緒に、ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。

――ありがとうございました。